温井朝岚は父の執務室に入ると、妹の温井澄蓮もいるのを見て、「澄蓮、ちょっと外に出ていてくれないか。父さんと二人で話したいことがあるんだ」と言った。
「ああ、わかった!」温井澄蓮が応じて出ようとしたところ、温井文海が「何か用があるなら、そのまま話せばいい。お前の妹は他人じゃないんだから」と言った。
「澄蓮、外に出てくれ!」温井朝岚は険しい表情で言った。
温井澄蓮は兄の厳しい表情を見て、心配になった。兄は一体何を父と話そうとしているのだろう。なぜ自分を外に出さなければならないのか。
しかも、兄の様子を見ると、きっと些細な話ではないだろう。
この二日間、兄は何か様子がおかしかった。以前より無口になり、あの優雅な笑顔も消え、全身から鋭い寒気が漂っていた。
もしかして山本綾音と喧嘩でもしたのかしら、と温井澄蓮は心の中で推測した。