第308章 もう死後なんて言わないで

温井朝岚は一瞬驚いた。父親……全ての黒幕は父親だったのか?

「温井取締役が工場の人に特別に依頼して、このような噂を広めさせたんです。そして、噂を主に広めた人たちの銀行口座にも、かなりの額の入金があったことも確認できました」アシスタントは続けて説明した。

温井朝岚はゆっくりと目を閉じ、体を背もたれに重く預けた。「わかりました」

まさか、背後から一撃を加えたのが父親だったとは!

そうか、父は常に自分と山本綾音を引き離そうとしていたから、当然手を打ってきたわけだ。

油断していた。父親に警告するだけで十分だと思っていたが、父が自分を温井家の後継者にしたいという執念がどれほど強いのかを考えていなかった。

執念……

彼の脳裏に山本綾音の姿が浮かんだ。綾音に対する自分の執念も、決して小さくはない。