訪ねてきた

仁藤心春は車を運転して山本家に着き、長い間インターホンを鳴らしてようやくドアが開いた。

山本綾音の腫れた目を見て、彼女は驚いた。「泣いていたの?」

山本綾音は苦笑いを浮かべた。「うん、おかしいでしょう。もう彼のことで泣かないと思っていたのに…やっぱり私、感傷的になってしまったみたい」

仁藤心春は友人の今の様子を見て、胸が痛んだ。「あなたも…温井朝岚のニュースを見たの?」

「見るつもりはなかったんだけど、事務所のスタッフから電話があって、このニュースについて話してくれて。彼が高橋家のお嬢様と結婚するなら、それはそれでいいことだと思う。後で記者が撮った写真を見たけど、高橋家のお嬢様はとても綺麗で、二人は…」

「お似合い」という言葉が喉に詰まって、どうしても出てこなかった。