もう関係ない

仁藤心春は一瞬驚いたが、温井卿介が顔を背けるのを見ただけだった。まるで先ほどの視線の交差は、偶然に過ぎなかったかのように。

そうだ、彼らはもう別れたのだ。しかも彼女から切り出したのに、温井卿介にどんな反応を期待できるというのだろう?

むしろ、彼は自分が彼女を愛してしまうかもしれないという事実を、心底嫌悪していた。最初から最後まで、彼女は単なる玩具に過ぎなかった。気に入っている時は宝物のように扱い、気に入らなくなれば使い古した履き物のように捨て去る。

温井卿介は立ち去った。仁藤心春に一瞥もくれずに。

仁藤心春は振り向いて、まだ彼女を抱きしめている秋山瑛真を見た。「これで彼の反応が分かったでしょう」

秋山瑛真が口を開いた。「君は本当に彼と別れたのか?」

「私と彼のことは私の私事です。秋山様には、もう私の私事に興味を持たないでいただきたいですね」仁藤心春は冷たく返した。