大好き

秋山瑛真はその人の傍に歩み寄り、白髪交じりの髪と年老いた顔を見つめた。

「お父さん、私が間違っていました」彼はかすれた声で言った。

秋山のお父さんは顔を上げ、息子を見た。「どうしたんだ?何があったんだ?」

秋山瑛真は言葉に詰まり、父の質問にどう答えればいいのか分からなかった。

ずっと憎んでいた人が、実は忘れられない恩人だったなんて、これ以上の皮肉があるだろうか?

しかも、恩を仇で返してしまった。

「お父さん、もし自分が恩のある人を傷つけてしまったら、どうすればいいんだろう?」彼はつぶやくように尋ねた。

「それなら償いなさい。十分だと思うまで」秋山のお父さんは答えた。

秋山瑛真は薄い唇を固く結んだ。償う...もう償うことができるのだろうか?仁藤心春は今、末期の白血病だ。どうやって償えばいいのか?最高の医者を探す?最高の治療を受けさせる?

でも、それで彼女の命をどれだけ延ばせるというのか?

あの女性が死ぬことを考えると、息が詰まりそうな感覚に襲われる。

「お父さん、仁藤翔燕のことを恨んでいる?」彼は唐突に尋ねた。

仁藤翔燕、仁藤心春の母親だ。すべての恩讐は、この悪女が原因だった。

「恨んだこともあった。なぜ私を騙したのかと。でも、それ以上に愛していたような気がする。私が徐々に冷静さを取り戻した時、彼女が亡くなったことを知った。かつての感情も、少しずつ手放せるようになった。愛も憎しみも、人は死んでしまえば灯火が消えるように、過ぎ去ったすべてが風とともに消えていくんだ」秋山のお父さんは呟くように語った。

風とともに消えていく?父はそんなにも淡々と言えるのに、もし仁藤心春が死んでしまったら、彼女に対する自分のこの言葉では言い表せない感情も、風とともに消えていくのだろうか?最後には平穏になれるのだろうか?

「瑛真、もう心春を恨むのはやめなさい」秋山のお父さんは言った。

秋山瑛真の体が急に硬直した。