山本綾音は驚いて立ち止まった。先ほど彼女とぶつかったウェイターが、誰かに平手打ちを食らわされていた。
その平手打ちは強烈で、ウェイターは地面に倒れ込んでしまった。
殴ったのは、高価な服を着た、お金持ちの坊ちゃんらしき人物だった!
「まったく縁起でもない。この服がいくらするか分かってるのか?!お前の命を取ったところで弁償できないんだぞ!」相手は怒り心頭で、足を上げてウェイターを蹴りつけた。
ウェイターは痛みで苦しんでいたが、声を上げることもできず、ただひたすら謝り続けた。「工藤様、申し訳ございません、申し訳ございません……」
しかし工藤鋭介はまったく聞く耳を持たず、ウェイターを蹴り続けた。
山本綾音はこれ以上見ていられなかった。結局、この事態は彼女にも責任があったのだから。「もう謝ってるじゃないですか、そこまでする必要ないでしょう!」