宴会の思惑

山本綾音は少し躊躇してから、ついに「わかりました、一緒に行きます」と言った。

「綾音!」仁藤心春は慌てて山本綾音の手を掴んだ。相手は善人には見えず、綾音が連れて行かれたら、きっと良いことにはならないはずだ!

「心春、あなたが何を心配しているのかわかるわ。でも私はただ工藤さんに会って、いくつかのことを説明するだけよ。大丈夫だから!」山本綾音は言った。

今は、もう朝岚が彼女を守ってくれる存在はいない。それなのに、彼女は両親を守らなければならない。

もし今断れば、高橋家が両親に報復するかもしれない。だから工藤さんに会って、自分の立場を明確にした方がいいと思った。

親友である仁藤心春も、綾音の懸念を理解していたが、このまま安心して送り出すことはできなかった。

そこで彼女は「私も一緒に行くわ。あなたを一人で彼らと行かせるなんてできない!」と言った。

「心春!」綾音は焦った。親友を巻き込みたくなかった。

「行くわ!」仁藤心春は断固として言った。

工藤鋭介は笑い出した。「ハハハ、本当に感動的な友情だな。行きたいなら一緒に行けばいい。お前たちのような一般人が、俺たちの世界に足を踏み入れられないことを、二人とも思い知らせてやる!」

工藤鋭介はそう言うと、手を振り上げた。すぐに別の車が山本綾音と仁藤心春の側に寄せられ、二人はほとんど押し込められるように車内に入れられた。

車は未知の方向へと走り出し、山本綾音は申し訳なさそうに親友を見つめた。「ごめんね」

「バカなこと言わないで、私が自分で付いて行くって言ったのよ!」仁藤心春は言い、そして声を低くして親友の耳元で囁いた。「もし本当に何か起きたら、私が彼らを引き留めるから、あなたは逃げて」

「そんなことできないわ。逃げるなら心春が逃げて!」山本綾音は拒否した。

「綾音」仁藤心春は親友の手を握りしめた。「あなたも知ってるでしょう。私にはもう数ヶ月しか時間がないの。早かろうが遅かろうが、私にとってはそれほど変わらない。でもあなたにはまだ両親を看る必要があるし、健康な体で長生きできる。だから...もし万が一のことがあったら、あなたが生きることが一番いい選択なの」

山本綾音の目に、一瞬にして涙が溢れた。