仁藤心春はゆっくりと体を起こし、じっと秋山瑛真を見つめた。
「あなた……」彼女は少し躊躇した後、ゆっくりと口を開いた。「ありがとう」
秋山瑛真の目が暗くなった。彼女のその「ありがとう」という言葉は、今、彼の耳には非常に耳障りに聞こえた。
「何のお礼を言っているんだ?」彼は彼女のベッドの横の椅子に座り、彼女の方に身を乗り出して尋ねた。
「綾音を連れ出してくれてありがとう」彼女は言った。先ほど綾音の顔の傷が増えていなかったことから、自分が気を失った後、彼が綾音と一緒にそこから離れたのだろう。
彼は苦笑いを浮かべた。「僕への感謝は、ただ他人を助けたからだけなのか?」
「綾音は他人じゃない、私の一番大切な友達よ」心春は言った。「本当にありがとう」
「山本綾音が君の一番大切な友達なら、僕は何なんだ?僕は君にとって何なんだ?」瑛真は低い声で言った。
心春は唇を噛んで、黙っていた。
瑛真は続けた。「僕は多くの間違いを犯したことは分かっている。今となっては、たとえ君が許すと言っても、それは他人を許すような感じなんだろう。でも、できることなら、僕たちが以前のように、お互いを大切な存在として、頼り合える関係に戻れたらと思う」
心春は少し恍惚としていた。二人の関係はすでにあんなにひどい状態になってしまい、彼女は彼に対して諦めていた。どうして以前のような関係に戻れるだろうか?
「そんな目で見ないでくれ」瑛真は苦しそうな声を上げた。「分かるか?君のその目は、僕の今の願いが単なる妄想に過ぎないと言っているようだ」
「私は……」
心春が口を開こうとした時、病室のドアが開き、山本綾音と医師、看護師が入ってきた。
瑛真は立ち上がって、場所を空けた。医師と看護師は心春の検査を始めた。
しばらくして、医師は言った。「仁藤さん、今回の出血は止まりましたが、今後は出血の状態が徐々に悪化する可能性が高いです。入院して治療を受ければ、適切なドナーが見つかるまでの間、できる限り命を長らえることができるかもしれません」
心春は淡々と言った。「それでどのくらい延ばせるのですか?」
「短ければ1、2ヶ月、長ければ半年ほどかもしれません」医師は答えた。