仁藤心春はゆっくりと体を起こし、じっと秋山瑛真を見つめた。
「あなた……」彼女は少し躊躇した後、ゆっくりと口を開いた。「ありがとう」
秋山瑛真の目が暗くなった。彼女のその「ありがとう」という言葉は、今、彼の耳には非常に耳障りに聞こえた。
「何のお礼を言っているんだ?」彼は彼女のベッドの横の椅子に座り、彼女の方に身を乗り出して尋ねた。
「綾音を連れ出してくれてありがとう」彼女は言った。先ほど綾音の顔の傷が増えていなかったことから、自分が気を失った後、彼が綾音と一緒にそこから離れたのだろう。
彼は苦笑いを浮かべた。「僕への感謝は、ただ他人を助けたからだけなのか?」
「綾音は他人じゃない、私の一番大切な友達よ」心春は言った。「本当にありがとう」
「山本綾音が君の一番大切な友達なら、僕は何なんだ?僕は君にとって何なんだ?」瑛真は低い声で言った。