条件を提示する

「何ですって?」仁藤心春は矢のように前に進み出て、先ほどそう言った人の腕を掴んだ。「今なんて言いました?秋山様が骨髄移植に適した人を探しに行くって?」

話をした看護師は、仁藤心春を見てすぐに戸惑った様子を見せた。「仁藤さん、どうして病室を離れているんですか?今のお体の状態では、病室で休んでいた方がいいですよ。」

「骨髄移植に適した人って、どういう意味ですか?」仁藤心春は追及し、不吉な予感が湧き上がってきた。

「秋山様は、適した候補者がいるかもしれないとだけおっしゃっていました。でも、まだ確信が持てないようで、その方を連れてきて適合検査をすると言っていました。仁藤さん...ご存じなかったんですか?」看護師は不安そうに尋ねた。

仁藤心春の表情が一瞬にして暗くなった。

もし、彼女と適合する可能性がある人がいるとすれば、それは...おそらく悠仁だ!

結局のところ、今、本当に彼女と血縁関係がある人は、悠仁しかいないのだから!

もし秋山瑛真が悠仁を探しに行くなら...そう考えただけで、仁藤心春の胸が締め付けられた。頭の中には、どうしても秋山瑛真に悠仁と骨髄移植の話をさせてはいけないという思いしかなかった!

……

山本綾音が気持ちを落ち着かせてトイレから出て、病室に戻ったとき、目にしたのは誰もいない空っぽの病室だった。

その瞬間、彼女は凍りついた。心春はどこ?!

————

カフェで、田中悠仁は今日突然彼を訪ねてきた秋山瑛真を見つめていた。

彼は秋山瑛真についてあまり知らなかった。ただ、この男が子供の頃にお姉さんと一年余り一緒に暮らしていたこと、そして今はGGKの社長であることだけを知っていた。

「僕を呼び出して、一体何がしたいんですか?」田中悠仁は尋ねた。

「まず、君のお姉さんについてどう思っているのか知りたい。」秋山瑛真は言った。

「それは私の個人的な問題で、あなたに話す必要はないと思います。」田中悠仁は返答した。

「では、もしお姉さんが君の助けを必要としているとしたら?君は助けてあげる気はある?」秋山瑛真は更に言った。

田中悠仁は目を細めた。「それがあなたとどんな関係があるんですか?」

「君のお姉さんは、私にとってとても大切な人なんだ!」だからどんなチャンスでも試さなければならない、彼女をこのまま死なせるわけにはいかない!