手の中に、彼からの温もりが伝わってきた。
仁藤心春はゆっくりと目を上げ、秋山瑛真を見つめた。「本当にそれが必要だと思う?たとえ私が昔あなたを見捨てなかったとしても、あなたが困っていた時に援助したとしても、私たちはあんなに長い間離れ離れだった。多くのものが昔とは違ってしまった。それに、時には感情というものは消えてしまえば、それで終わりなの。今のように…」
彼女は彼に握られていないもう片方の手をゆっくりと上げ、優しく彼の頬の涙を拭った。
彼の体が激しく震え、そして彼女の声が続いた。「今のように、あなたが泣いているのに、私の心は何も揺れない。昔なら、きっとすごく心が痛んだはずなのに。」
でも、今は後悔だけが残っている。
心が死んでしまうと、元通りになることは本当に難しいものなのだ。
秋山瑛真はまつ毛を震わせながら、仁藤心春の手のひらに頬を寄せた。「昔の感情が消えてしまったのなら、これからの時間で、その感情を埋めていく。昔以上の想いにしてみせる!」
仁藤心春の目には自嘲の色が浮かんだ。「残念だけど、私にはそんなに多くの『これから』はないわ。」
「僕が『これから』があると言えば、必ずある!」秋山瑛真は断固とした声で言った。「心春、絶対に僕より先に死なせない!」
まるで厳かな誓いのように!
その瞬間、彼女は思わず呆然となった!
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山本綾音が翌日仁藤心春を見舞いに来た時、顔の腫れはまだ引いていなかった。
「瑛真さんは?」病室に入ったが、秋山瑛真の姿は見当たらなかった。
「少し用事があって、さっき出て行ったところよ。」仁藤心春は言った。「そうそう、昨日あんな状態で帰って、ご両親は驚かなかった?」
「ちょっと驚いていたわ。」山本綾音は答えた。
「どう説明したの?」
「どう説明するって、適当な言い訳よ。道で変な人に会って殴られたって言ったの。」山本綾音は言った。「母さんったら、また殴られないように私に武術教室に通わせようとしているわ。」
まあ、高橋家の人たちは確かに気が狂っているように見えたけど。
「武術教室に通うのも悪くないわね。」仁藤心春は言った。少なくとも自己防衛の力が身につく。
山本綾音は嘲るように言った。「でも残念ながら、たとえ武術を習得したとしても、高橋家のような手下を大勢抱えている相手には何の役にも立たないわ。」