退院

医者はため息をつきながら、「はい、秋山様から、退院させないようにと言われています」と言った。

「病院には私の自由を制限する権利はありません」と仁藤心春は言いながら、荷物を持って病室のドアを開けた。

しかし次の瞬間、彼女の足は止まった。ドアの前に何人もの警備員が立っており、そのうちの二人が直接彼女の行く手を遮ったからだ。

「仁藤さん、病室にお戻りください」警備員は恭しくも冷たく言った。

仁藤心春は背筋が凍る思いがした。秋山瑛真は直接人を派遣して彼女の自由を制限するつもりなのか?!

「このようなことを続けるなら、警察を呼びます!」仁藤心春は冷たく言った。

「仁藤さんのご自由にどうぞ」警備員は答えた。

仁藤心春は唇を固く結び、携帯を取り出した。110番に電話をかけようとした瞬間、突然声が響いた。「そんなにも病院にいたくないのか?」

彼女の体は突然硬直し、声のする方を見上げると、そこには紛れもなく秋山瑛真がいた。

「はい、もう十分明確に表現したと思いますが!」彼女は言った。

医者は秋山瑛真の側に寄り、困ったように言った。「秋山様、この状況では……」

「いい、みんな外に出てくれ。彼女と二人で話がある」秋山瑛真は言った。

医療スタッフは病室を出て行き、秋山瑛真は病室に入ると、後ろ手でドアを閉めた。

「秋山様、たとえこれらの警備員を配置したとしても、警察が来たら、本当に警察を止められるとでも?」仁藤心春は皮肉を込めて言った。

秋山瑛真はゆっくりと彼女の前まで歩み寄り、「警備員たちは警察は止められないかもしれないが、警察が来る前にお前を別の場所に移すことはできる」と言った。

彼女の瞳孔が突然縮んだ。「あなた……」

「心春、私が本当にお前を退院させたくないのなら、お前を病院に閉じ込めておく方法は千も万もある」秋山瑛真は優しく囁くように言った。その口調には謙虚さすら含まれていた。「私はただお前に病気をしっかり治してほしい。長く生きてほしいだけなんだ」

「自由を奪われて、不幸せに生きるなら、長生きに何の意味があるのですか?」仁藤心春は冷たく言った。

彼は彼女をじっと見つめ、「本当に退院する決心がついたのか?もう一度考え直さないか?」と尋ねた。