「山本綾音、あなた……瑛真に昔のことを話したのね。そうでしょう?」突然、坂下倩乃が山本綾音に向かって叫んだ。
もし寄付の真相が仁藤心春の口から出たものでなければ、山本綾音の可能性が高い。だって、彼女は仁藤心春と仲が良いのだから!
山本綾音はすぐに理解した。坂下倩乃が今のような状態になったのは、おそらく秋山瑛真のせいだろう。
そうだ、秋山瑛真のような人が、自分にそんな大きな嘘をつかれるのを許すはずがない!
「人に知られたくないなら、最初からしなければいい!でも今は無駄話をしている暇はないわ!」山本綾音は言い終わると、受付に向かって言った。「秋山会長に伝えてください。山本綾音が彼のお姉さんについての重要な用件で会いたいと。そうすれば、きっと会ってくれるはずです!」
受付は半信半疑で内線電話をかけ、しばらくして丁重な態度で山本綾音に言った。「山本さん、こちらへどうぞ。」
山本綾音は受付についてエレベーターの方向へ向かった。
坂下倩乃はその様子を見て、ますます取り乱した。「山本綾音、このことがこれで済むと思わないで。私たちの問題はまだ終わっていない……」
山本綾音は坂下倩乃の脅しなど気にも留めず、今は仁藤心春のことだけを考えていた。
社長室に着くと、秋山瑛真は執務机に座り、入ってきた山本綾音を見て言った。「心春に何かあったのか?」
「旅行に行きました。」山本綾音は答えた。
「何だって?」秋山瑛真は驚いた様子だった。
「前から旅行に行きたがっていたそうで、今その願いを叶えたいと言っていました。でも彼女の体調が心配です!それに、私が知った時には既に新幹線に乗った後で、今は……もう降りているはずです!」山本綾音は言った。
秋山瑛真は眉をひそめた。
「一、二日だけでいいので、誰かに見守らせてもらえませんか?後で私の両親の世話をする臨時のヘルパーを手配して、それから心春のところへ行きます。毎日電話すると言っていますが、もし途中で何かあった時に、すぐに駆けつけられないので。」山本綾音は言った。
「あなたが行く必要はない。私が行く。」秋山瑛真は言った。
「え?」山本綾音は一瞬固まった。
「私が行くと言った。彼女の旅行に関する情報を教えてくれればいい。」秋山瑛真は言った。