彼は一生涯、彼女だけを愛する

仁藤心春が振り向くと、温井卿介が拍手をしているのが目に入った。その美しい顔には今や傷が付いており、漆黒の鋭い瞳には暗い影が宿っていた。

「感動的だね。秋山瑛真を守るためにそこまで命を懸けられるなんて」温井卿介は皮肉を込めて言った。「やはり、この世で一番当てにならないのは感情だな」

つい先ほどまで、この女は自分のことを想っていたはずなのに、今では明らかに別の男に心が移っている。

その事実に気付き、彼の胸の中で渦巻く嫉妬の念はより一層強くなった。

仁藤心春は冷静に言った。「瑛真が私の側にいてくれるなら、彼のために命を懸けることに何の問題があるの?」

その言葉を聞いた後ろの秋山瑛真は、体が震え、目には信じられない表情が浮かんでいた。

「今日は彼のために命を懸けて、今度は誰のために命を懸けるんだ?仁藤心春、お前の命は本当に安いものだな」温井卿介の声はさらに冷たくなった。