仁藤心春は全く予想していなかった。秋山瑛真を見つけた時、彼が温井卿介と激しく殴り合っていたなんて!
個室で秋山瑛真をしばらく待っていたが、彼が戻って来なかったので、仁藤心春は部屋を出て探しに行くことにした。
数歩も歩かないうちに、ホテルのスタッフがトイレの方向へ慌てて走っていくのが見え、彼らの会話が聞こえてきた——
「まずい、あの二人が喧嘩を始めたけど、どうやって止めればいいんだ!」
「さあね、あの二人とも只者じゃないって聞いたよ。喧嘩したいなら誰も止められないだろう!今日店を壊されても、店主は何も言えないだろうな」
「二人とも塩浜市から来たって聞いたけど、何か個人的な恨みでもあるのかな…」
「そういう大物の事は、あまり詮索しない方がいいよ」
仁藤心春は驚いた。塩浜市から来た?