生きる希望

仁藤心春は頷いて言った。「骨髄バンクで適合する方が見つかって、ドナーの方も提供してくれるそうです。だから急いで病院に戻って、手術の準備をすることになりました」

「それなら、まずは塩浜市に戻りましょう。どうせ治ったら、また広島に来られるし、好きなだけ滞在できるから」と秋山瑛真は言った。

「あなた、全然驚いていないみたいね」と彼女は言った。まるで適合するドナーが見つかることを前から知っていたかのように。

「君が必ず生きていけると信じていたからだよ」と秋山瑛真は答えた。

仁藤心春は依然として疑わしげに秋山瑛真を見つめていた。

秋山瑛真は軽く肩をすくめて、「実は、病院から昨日電話があってね。でもその時はまだドナーの意向が分からなかったから、君には言わなかったんだ。今の様子を見ると、ドナーは提供を承諾してくれたみたいだね」

彼の答えで、仁藤心春の疑念は晴れた。

「じゃあ、今から戻る?」と秋山瑛真は尋ねた。

「うん」仁藤心春は微笑んで答えた。

思いがけず、彼女の病状が好転し、適合する骨髄が見つかった。手術が成功すれば、彼女は...本当に生きていけるかもしれない。

生きて、まだやり残していることをたくさんしたい!

出発前に、仁藤心春はもう一度あの縁結びの木を見つめずにはいられなかった。

ここを訪れた人は、いつか必ずこの木の下に戻ってくると言われている。

それなら、彼女も治癒したら、もう一度この木の下に戻ってくるのだろう。そしてその時、誰が彼女の傍にいるのだろうか?

瑛真だろうか?

「どうしたの?」仁藤心春が立ち止まったのを見て、秋山瑛真は尋ねた。

「なんでもないわ」と彼女は言って、また歩き出した。

その夜、仁藤心春と秋山瑛真は飛行機で塩浜市に戻り、直接病院に入院した。手術前の各種検査を開始し、彼女の体調が手術に適しているかどうかを確認することになった。

山本綾音は親友が戻ってきたことを知ると、すぐに病院に駆けつけた。

「次は黙って旅行に行くのはやめてよ。本当に心配したんだから!秋山瑛真さんが探しに行ってくれなかったら、私...」山本綾音は不機嫌そうに言った。

「何も起こらなかったでしょう」と仁藤心春は言った。

「よく言うわね。本当に何か起こってほしかったの?!」山本綾音は言った。「もし次にまたこんなことをしたら、私...私...」