仁藤心春は頷いて言った。「骨髄バンクで適合する方が見つかって、ドナーの方も提供してくれるそうです。だから急いで病院に戻って、手術の準備をすることになりました」
「それなら、まずは塩浜市に戻りましょう。どうせ治ったら、また広島に来られるし、好きなだけ滞在できるから」と秋山瑛真は言った。
「あなた、全然驚いていないみたいね」と彼女は言った。まるで適合するドナーが見つかることを前から知っていたかのように。
「君が必ず生きていけると信じていたからだよ」と秋山瑛真は答えた。
仁藤心春は依然として疑わしげに秋山瑛真を見つめていた。
秋山瑛真は軽く肩をすくめて、「実は、病院から昨日電話があってね。でもその時はまだドナーの意向が分からなかったから、君には言わなかったんだ。今の様子を見ると、ドナーは提供を承諾してくれたみたいだね」