約束を交わす

「私にはそんなに長い時間はないのに、どうしてそんなことを言うの」と仁藤心春は眉をひそめて言った。

「もし本当に長い時間があったら、承諾してくれるのか？」と彼は問い返した。

彼女は一瞬言葉に詰まり、しばらくしてから「どうしてあなたは私が長生きできると思うの？」と言った。

「じゃあ賭けをしないか。もし君が長生きできたら、これからの人生を僕と一緒に過ごして、一生僕のそばにいてくれないか？そして僕も、一生君のそばにいる」と秋山瑛真は言った。

仁藤心春は目の前の人をじっと見つめた。彼の表情は真剣そのもので、まるで一生涯の約束を交わすかのようだった。

かつて彼女の目に映った陽気な少年は、今や成熟した男性へと成長していた。

そして彼の彼女を見る目は、まるで彼の世界には彼女しか存在しないかのようだった！

仁藤心春の胸に苦い思いが込み上げてきた。三人の弟のうち、卿介は彼女を見捨て、悠仁は彼女を嫌っている。まさか巡り巡って、最後に彼女のそばにいる人が瑛真になるとは。

命は長くないけれど...今この瞬間、彼の目に失望の色を見せたくなかった。

「あなたの好きなように。もし私が本当に長生きできたら、その時は、あなたと一緒にいてもいいわ」と仁藤心春は言った。

その漆黒の瞳が一瞬で輝きを増し、セクシーな薄い唇が弧を描いた。「本当？約束してくれたの？本当に僕と一緒にいてくれる？」

「ええ、約束したわ」彼の笑顔は彼女にも伝染したようで、この瞬間、彼女も気分が良くなったような気がした。

「よかった！」彼は満面の笑みを浮かべ、突然彼女を抱き上げた。「ありがとう、約束してくれてありがとう！」

仁藤心春は呆気にとられ、慌てて「な、何をするの、早く降ろして」と言った。

「このまま抱きしめていたいんだ！」そう言いながら、彼は顔を彼女の胸に埋めた。「心春、僕たちは物語の中の男女のようにはならない。僕は君のそばにいて、絶対に君を失わない！僕たち、きっと幸せになれる！」

仁藤心春は目を伏せ、彼の柔らかな黒髪を優しく撫でた。できることなら、彼女も幸せになりたかった。でも...

「早く降ろして、周りの人が見てるわ」と彼女は小声で言った。

今や二人は、周囲の人々の注目の的となっていた。

「いつも他人の目を気にしていたら、疲れないか？」と彼はぶつぶつと言った。