そのとき、病室のドアが開き、秋山瑛真が入ってきた。
山本綾音は顔色を変え、すぐに口を閉ざした。
「どうしたんだ?何を話していたんだ?私が来たら、急に話が止まったようだけど」と瑛真が言った。
「私が手術の成功不成功に関わらず、ドナーさんにプレゼントを贈りたいと言ったんですけど、綾音がいらないと言って。その理由を聞いていたところです」と仁藤心春が答えた。
「そうか?」瑛真の視線が山本綾音に向けられた。
山本綾音は急に心虚くなり、瑛真の目を見返す勇気が出なかった。
「私から医師を通じてドナーにお礼をし、相応の謝礼も用意するから、君からプレゼントを贈る必要はない」と瑛真が言った。
「でも、これは私の問題なのに、なぜあなたがお礼をするんですか」と心春が言った。
「今となっては、こういうことで君と私を分ける必要があるのかな?」瑛真は前に進み、心春の手を取って言った。「約束を忘れていないだろう?君が生きられるなら、私と一緒になるって」
心春は顔を赤らめた。約束した時は、自分が本当に生きられる可能性があるとは思っていなかった。
でも今は……
「もしかして、約束を破るつもりか?」と瑛真が言った。
「いいえ、約束は破りません!」と彼女は答えた。
「それならいい」瑛真は微笑んだ。
傍らにいた山本綾音は、この会話を聞いて目を丸くして親友を見つめた。「心春、あなたと彼は……」
心春は少し気まずそうに言った。「大体あなたが聞いた通りよ。詳しいことは、また後でゆっくり話すわ」
山本綾音は「ああ」と答えたが、さらに心配そうな表情を浮かべた。
田中悠仁のことは、時限爆弾のようなものだった。もし心春が知ってしまったら、彼女と瑛真の関係はどうなってしまうのだろう?
しばらくして、看護師が病室に来て、心春を検査に連れて行った。病室には山本綾音と瑛真の二人だけが残された。
「あなたと心春が一緒になるって……どういう意味なんですか?」山本綾音は我慢できずに尋ねた。
「あなたが想像している通りだよ」と瑛真は答えた。
「本気なんですか?」山本綾音は心配そうに言った。親友は以前、恋愛で多くの苦労を経験していたので、もう一度傷つけられるのは見たくなかった。