山本綾音は驚いて、同じ病室にいた秋山瑛真は、すでに先に飛び出していた。
山本綾音は急いで追いかけ、病室の外で坂下倩乃が必死に仁藤心春に向かって突進しているのを目にした。仁藤心春に付き添っていた看護師は心春を後ろに庇い、他の数人の看護師も前に出て坂下倩乃を押さえていた。
しかしその時、坂下倩乃は狂ったかのように、突然短刀を取り出した。
周囲から一斉に息を飲む音が聞こえた。
元々坂下倩乃を止めていた看護師たちも、みな後ずさりした。今の坂下倩乃は完全に狂気に取り憑かれたようで、次にナイフで無差別に切りつけてくるかもしれないからだ。
「仁藤心春、全部あんたのせいよ。あんたがいなければ、私がこんな目に遭うことはなかった。私を台無しにしたのはあんたよ!死んでしまえ!」
坂下倩乃の言葉が終わるや否や、彼女は手にした短刀を仁藤心春に向かって振り下ろした。