裏切らないで

仁藤心春は病室に戻り、看護師が彼女の応急止血を手伝う中、秋山瑛真は傍らに立ち続け、必ず心春の出血が止まるのを見届けようとしていた。

心春は現在の凝血機能の問題で止血が非常に遅かったため、最終的に仕方なく、秋山瑛真の傷の処置をする医師は心春も一緒に手術室に入れることにした。

医師は秋山瑛真の腕の傷を診察し、「秋山様、現在のお怪我は麻酔をせずに処置するのが最善かと思われます。そうすれば痛みを感じることができ、抜去の過程で何か問題が起きた場合にすぐに分かります。ただし、それでも麻酔を希望されるのでしたら…」

「必要ありません!」秋山瑛真は医師の言葉を遮った。「麻酔なんて必要ない、このまま直接抜いてください。」

医師は頷いた。患者本人が同意するなら、それが一番良いことだった。

医師がナイフを抜く時、最も緊張していたのは却って心春だった。

「心配する必要はない。この程度の痛みは私にとって大したことではない。以前私が受けた怪我は…」秋山瑛真の声が突然途切れ、言葉を続けずに医師の方を向いて「抜いてください」と言った。

医師は手を上げ、ナイフを慎重かつ素早く引き抜いた。

すると、それまでナイフで塞がれていた傷口から、一気に鮮血が噴き出した。

傍らの看護師がすぐに止血作業に取り掛かり、医師は迅速に傷口の縫合を始めた。

秋山瑛真は平然とし、一度も痛みを訴えることはなかったが、反対に心春は、ナイフが抜かれ血が噴き出した時に思わず息を飲み、医師が傷口を縫合する様子を見ながら、眉をひそめ、不快な感覚が込み上げてきた。

まるでその針が、自分の体を縫い合わせているかのようだった。

「気分が悪いなら、見ない方がいい。」大きな手が彼女の両目を覆い、全ての視界を遮った。

これは…秋山瑛真の手、怪我をしていない方の腕の手だった。

「ごめんなさい。」彼女は呟いた。目の前は真っ暗だったが、それでも少し楽になり、吐き気を催すような不快感が少しずつ消えていった。

「君が謝ることなんてない。」秋山瑛真が言った。

「私のせいでなければ、あなたはこんな怪我をすることはなかったのに。」彼女は申し訳なさそうに言った。