どうして忘れられるの

温井澄蓮はゆっくりと知っていることをすべて話し、温井朝岚を物置部屋の前に連れて行った。

「ここにはお兄さんが以前描いた絵があるの。あなたが彼女をどれほど愛していたか、これらの絵を見ればわかるかもしれません」と温井澄蓮は言った。

温井朝岚は物置部屋のドアを開け、中に入った。

部屋には絵がたくさん飾られており、それらの絵に描かれている人物は全て一人の人——山本綾音だった!

それは……彼が描いた絵だった!

温井朝岚は驚愕の表情でこれらの絵を見つめた。絵の数は多く、彼がどれほどの時間をかけて描いたのかが想像できた。

これほど多くの絵を、しかも一人の人物だけを描き続けるには、数年の歳月がなければ到底描ききれないはずだ。

そして彼が彼女をどれほど愛していたのか、これらの絵を見れば十分に理解できた。

なぜ……なぜこれほどまでに愛していた人を、彼は忘れてしまったのか?!

頭が再び激しく痛み始めた。まるで無数の針が頭を刺すように、脳の神経一本一本を刺すような痛みだった。

「うっ……綾音……」温井朝岚は頭を抱えながら、山本綾音の名を呻くように呼んだ。

一緒に物置部屋に入った温井澄蓮は、兄の様子がおかしいのを見て急いで一歩前に出た。「お兄さん、どうしたの?頭が痛いの?」

温井朝岚は顔面蒼白で、額から大粒の汗が次々と流れ落ちていた。しかし彼の片手は、壁に掛けられた一枚の絵にしっかりと触れていた。

絵の中の山本綾音は、まばゆい笑顔を浮かべていた。

温井朝岚の手は、絵の中の人物の微笑む赤い唇を震えながら撫でていた。「なぜだ……私はなぜお前を忘れてしまったんだ。こんなにも……愛していたのに、こんなにも愛していたというのに……」

「お兄さん!」温井澄蓮には、温井朝岚の様子が憑き物が取り付いたかのように見えた。

温井朝岚は聞こえていないかのように、ただ震える手で絵の中の山本綾音を撫で続けた。

「どうしてだ……どうして忘れてしまったんだ……忘れては……忘れてはいけなかったのに……」彼は呟きながら、頭痛はさらに激しくなり、視界が徐々に暗くなっていき、全身が暗闇に飲み込まれていくような感覚に襲われた。

そして彼が暗闇に沈む直前、最後に目に映ったのは、絵の中の山本綾音の眩しい笑顔だった!

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