「んっ……」仁藤心春の顎が強く掴まれ、叫ぼうとして口を開けた瞬間、温井卿介の舌先が彼女の口の中に押し入ってきた。
荒々しい舌が彼女の小さな舌と絡み合い、口の中を満たし続け、逃げることもできなかった。
キスは、窒息しそうなほど激しかった。
仁藤心春は手を上げて相手を押しのけようとしたが、次の瞬間、彼の長い指が簡単に彼女の手首を掴み、両手を背後に回してしまった。
彼女の胸は否応なく前に突き出され、彼の固い胸板に押しつけられた。
この体勢は、さらに彼女を苦しめた。
しかし今、口の中は完全に塞がれ、一言も発することができず、透明な唾液が絶え間なく口角を伝って流れ落ちていた。
窒息するようなキスは、まるで彼女のすべてを奪い、そして彼女のすべてを消し去ろうとしているかのようだった。
彼女の体は彼にしっかりと抱きしめられ、まるで彼の体の中に埋め込もうとしているかのようだった。
どれくらいの時間が経ったのか、ようやくそのキスは終わった。
仁藤心春は少しぼんやりとし、耳元で温井卿介の声だけが聞こえた。「秋山瑛真を好きになんてなるな。この先もずっとだ!」
彼女は震え、我に返って、急いで彼を押しのけ、二歩後ずさりし、手を上げて必死に唇と口角を拭った。
溢れ出た唾液は簡単に拭き取れたが、口の中には依然として彼の息遣いが満ちているようだった。
温井卿介は長い眉を寄せ、再び仁藤心春に迫り、彼女の顎を掴んだ。「どうした、まだ秋山瑛真のために貞操を守るつもりか?今ここで俺がお前を抱いても、秋山瑛真には何もできないと思うがな」
仁藤心春は顎の痛みに耐えながら言った。「まあ、温井社長はかつて捨てたおもちゃが欲しくなったんですか?私、よく覚えていますよ。温井社長が、もう二度と関係を持たないと言ったことを。それとも、その言葉を破るつもり?私にまだ未練があるとでも?」
温井卿介の表情が一瞬にして暗くなった。
仁藤心春は更に痛烈な言葉を続けた。「それとも、温井卿介、私に恋してしまったんじゃないの?」
彼女は分かっていた、彼が何を恐れているのかを!
温井おじさんの死のせいで、彼は誰かを愛することを恐れていた。だから彼は以前、この先誰も愛さないと彼女に言ったのだ!