忘れられない

仁藤心春は目を開けると、秋山瑛真の顔が目の前に迫っていた。

二人の距離は今とても近く、彼がもう少し前に進めば、簡単に彼女の唇にキスできるほどだった。

しかし、彼はまるで静止画のように、ただその深い海のような瞳で彼女を見つめていた。

もしかして、彼女の思い違いだったのだろうか?

その考えが頭をよぎった後、彼女は急に気まずくなった。

「あの...さっき私...私はてっきりあなたが...私...」

「キスしたかった」彼の声が突然彼女の言葉を遮った。

彼女が呆然としていると、頬に彼の指が優しく触れるのを感じた。「でも僕にとって、欲しいキスは同情や憐れみからじゃなく、君が本当に僕を愛してくれることなんだ」

「私...」彼女は口を開いて説明しようとしたが、どう説明すればいいのか分からなかった。

確かに先ほど目を閉じた瞬間、彼を気の毒に思い、断れなかっただけだった。

彼の指が少しずつ彼女の涙を拭っていく。

「傷が!」彼女は小さく叫んだ。

「大丈夫だ!」彼女の顔の涙をすべて拭い終わると、秋山瑛真は突然両腕を広げ、仁藤心春を強く抱きしめた。

「力を入れないで、傷が開いちゃうわ!」彼女は心配そうに言った。

「大丈夫だ!」彼は呟きながら、今は彼女を強く抱きしめていたかった。「いつか必ず、君は僕を愛してくれる。僕はその日まで待つよ!」

彼女は鼻が痛くなり、胸が苦しくなった。

いつかって?彼女にはもう時間がないことを、二人とも知っているのに。死ぬまでに、彼を本当に愛せるようになれないかもしれないのに。

それでも彼はその日を待つというのか?

ごめんなさい...彼女は心の中で呟いた。もし最初から温井卿介を愛していなかったら、今頃は簡単に瑛真を愛せたのかもしれない。

温井卿介...この名前を思い出すだけで、また胸が痛む。

もう愛していないのに、この名前は依然として彼女を苦しめる...

————

「何だって?彼女が入院した?」温井卿介は渡辺海辰を見つめながら言った。その深い瞳に、気づかれないほどの不安が一瞬よぎった。

「はい」渡辺海辰は答えた。「仁藤さんはしばらく入院されています。ただし秋山様が情報を制限されているため、どんな病気で入院されているのかまだ分かりません。この期間、秋山様は毎晩仁藤さんの病室で過ごされ、日中だけ離れるそうです」