「どうしたの?」仁藤心春の声が、秋山瑛真の物思いを引き戻した。
彼は心の中の強い不安を押し殺して、「何でもない。ただ温井卿介が承諾してくれなくて、彼が君に会いたがっているんだ。申し訳ない……」
仁藤心春はそれほど驚かなかった。秋山瑛真の帰りを待っている間に、既に最悪の事態を想定していたからだ。
「謝る必要なんてないわ。あなたのせいじゃないもの」と彼女は言った。
「でも、僕が解決すると約束したのに、結局は君に彼に会いに行ってもらうことになってしまった」秋山瑛真の声には後ろめたさと……不安が満ちていた。
彼が彼女と温井卿介との面会を恐れているのは、温井卿介が彼の過去を知っているからだけではなく、彼女がかつて温井卿介を愛していたからでもあった。彼は、彼女が温井卿介に会うたびに、既に落ち着いていた感情が再び燃え上がることを恐れていた。
彼女に温井卿介を愛してほしくない、温井卿介という人物に二人の間に介入してほしくなかった。
「瑛真、あなたは私のためにたくさんのことをしてくれたわ!」仁藤心春は突然秋山瑛真を抱きしめて言った。「私に対して後ろめたく思う必要なんてないの。本当に感謝してるわ、本当に……」
「たくさん?」彼はつぶやいたが、それでも足りない、全然足りないと感じていた。
本来なら彼女を生かすはずだったのに、今は何一つ達成できていない。骨髄移植はまだ行われておらず、田中悠仁も事故に遭い、そして彼女の命は徐々に終わりに向かっていた。
久しぶりの無力感が全身を包み込んだ。成功し始めてから、彼はこの無力感を感じることはほとんどなくなっていた。
そして今、それが再び現れた。
「たくさんよ」仁藤心春は確信を持って言った。「あなたがこうやって支えてくれなかったら、私は今まで持ちこたえられなかった。瑛真、あなたがいてくれて本当に良かった」
彼は突然強く彼女を抱きしめ返した。
彼女の「あなたがいてくれて良かった」という一言で、どんなに苦労や努力をしても構わないと思えた。残るのは、彼女のためにもっとできることがあったはずだという切なさだけだった。
「いつ行くつもり?」秋山瑛真は尋ねた。