仁藤心春は驚いて、「綾音、あなたはあっちに行く必要はないわ。家で私からの連絡を待っていてくれればいいの。瑛真がすべて手配してくれたから、私は危険な目には遭わないわ」
「取引する人のあなたが危険じゃないなら、私はもっと安全よ」山本綾音は言った。「私が本当に家で大人しく待てると思ってるの?秋山瑛真が付いて行けるなら、私だって行けるわ!」
親友の断固とした態度を見て、仁藤心春はこれ以上説得しても無駄だと悟り、秋山瑛真に向かって言った。「綾音のことを、しっかり守ってあげてね」
「ああ」秋山瑛真は応じた。
山本綾音が帰った後、秋山瑛真は言った。「本当に温井卿介をそこまで信用するのか?」
彼女のまつ毛が少し震えた。「ただ、彼がそんなにつまらない人じゃないと思うの。もし本当に助けたくないなら、何もしなくていい。ただ静かに結果を見守るだけでいいはずだから」
「彼を信用しすぎるな」秋山瑛真は呟いた。「今回は助けてくれたとしても、将来的には、彼を信用しすぎないほうがいい。お前が彼を信用しすぎて、将来また傷つけられることが心配だ」
仁藤心春は微かに笑った。「そんなに天真爛漫じゃないわ。だから、そんなに心配しないで」ただし、彼女の笑顔には、かすかな苦さが混じっていた。
そうね、もう二度と信じすぎることはない。これは何度も信じた末に、たどり着いた結論だった。
信じなければ、傷つくこともないのだから。
一日はあっという間に過ぎ、この夜、秋山瑛真は病室で彼女に付き添い続けた。
翌日、温井卿介が病室に現れ、同時に温井家の寶石の劍も持ってきた。
この寶石の劍を再び目にした仁藤心春は、やはり感嘆せずにはいられなかった。ただし、彼女が感嘆したのは、剣に散りばめられた輝かしい宝石ではなく、むしろこの剣が醸し出す歳月の重みだった。
そしてまもなく、彼女はこの剣を持って山田流真に会いに行くのだ。
時間が近づくと、一行は車に乗り込んだ。ただし温井卿介は、仁藤心春に自分の車に乗るよう主張した。
秋山瑛真は最初は気が進まなかったが、仁藤心春は最後に何か問題が起きるのを避けたかったので、自ら承諾した。秋山瑛真はそれを見て、仁藤心春の車の後ろを追うしかなかった。