『誤解だよ』

「あの……ごめんなさい、お二人とも続けてください!」山本綾音はそう言うと、病室から退出し、ドアを閉めた。

仁藤心春は閉められたドアを見つめ、それから秋山瑛真を見て、そして自分の手が瑛真の腹部に触れていることに気づき、顔が一気に赤くなった。

彼女は単に彼の怪我を確認しようとしただけだったが、この状況では、綾音が誤解したのは間違いないだろう!

「えっと……」心春は軽く咳払いをして、手を引っ込め、瑛真に言った。「服を……着てください」

腹部から温もりが急に消えて、瑛真は何か物足りない気持ちになった。

しかし、山本綾音が来てくれて良かった。もし彼女の手が彼の腹部をそのままなでていたら、彼の欲望は……

今の彼女は、まだ患者なのだ。

この瞬間、瑛真は自分の獣性を心の中で激しく非難した!

山本綾音が再び病室に入った時、仁藤心春はすでに身支度を整えていた。

山本綾音は意味ありげな目で秋山瑛真と仁藤心春を見つめた。

心春は頬を赤らめながら言った。「さっきのは、あなたが考えているようなことじゃないわ」

綾音はにやにやしながら言った。「私が何を考えているか知ってるの?」

「……」心春は言葉を失った。

「はいはい、私が考えすぎだったわ。何もなかったってことは分かってるわ」綾音はもう冗談を言うのをやめた。病室を出た後で考えてみれば、自分が誤解していたことに気づいたのだ。

心春の今の体調では、瑛真がどんなに興奮しても何もできないだろうし。

「そうそう、明日は山田流真との約束の日よね。温井卿介は本当に寶石の劍を渡してくれて、取引に行かせてくれるって確認したの?」綾音は尋ねた。

結局のところ、寶石の劍は温井家の家宝で、その価値は計り知れない。普通なら、そんなものを簡単に他人に渡したりはしないはずだ。

しかも、心春はそれを山田流真との取引に使おうとしている。もし取引の過程で何か問題が起きたら、寶石の劍は二度と戻ってこないかもしれない!

「まだよ」心春は答えた。

温井卿介は夜中に来ていたが、彼らの会話で寶石の劍については触れなかった。

「じゃあ、確認しに行く?もし明日彼が寶石の劍を出さなかったら……」綾音は心配そうに言った。

「彼はそんなことしない」心春は言った。

綾音は一瞬驚き、秋山瑛真も心春をじっと見つめた。