そう思うと、山本綾音の両足は突然力が抜け、よろめいてしまった。もし隣にいた温井朝岚が支えていなければ、きっと地面に倒れていただろう。
彼女の前方では、温井卿介、秋山瑛真、田中悠仁の三人が半円を描くように何かを見つめていた。
山本綾音は何とか体を支え、深く息を吸うと、突然温井朝岚を押しのけ、震える足で三人のいる場所へと向かった。
しかし、到着して勇気を振り絞って見てみると、目に入ったものは特に異常なものではなく、遺骨などは何もなかった。それに彼女はほっと胸をなでおろした。
よかった、少なくとも腐敗した死体は見つからなかった。それは心春がまだ生きている可能性があるということだ。
ただし、すぐに山本綾音は何か違和感に気づいた。
地面の一部分に、土と雑草があり、その雑草の部分が周囲と比べて明らかに低くなっていた。まるで何か重いものに押しつぶされたかのようで、そして最も重要なのは……
いくつかの草に、かすかに茶色い跡が付着しているように見えた……もしかして……
「もしかして心春が本当にここに流されてきて、この草に付いているのは彼女の血なのか?」秋山瑛真が疑問を口にした。
「それが何であれ、この草を持ち帰って検査したほうがいい」温井朝岚が言い、同行していた部下に道具を持ってくるよう指示した。
今回の調査では、そういった準備もかなりしていた。
田中悠仁が突然言った。「つまり、お姉さんはまだ生きているということですか?」
秋山瑛真は田中悠仁を見つめた。「お前は彼女に生きていてほしいのか?」
「はい」彼は答えた。
「じゃあ、なぜあの時は望まなかったんだ?もしお前があの時も望んでいれば、心春は……」秋山瑛真は悔しそうに髪をかき乱し、田中悠仁を激しい目つきで睨みつけた。「お前が心春の弟でなければ、とっくに海に放り込んでいたところだ!」
田中悠仁は静かに立ち尽くし、何も言わなかった。
山本綾音が言った。「もういいでしょう。今彼を責めても仕方ありません。それより心春のことですが、もし本当にここに流されてきたのなら、今はどこにいるのでしょう?どうやってここを離れたのでしょう?」
「……」誰も答えず、洞窟の中は再び静寂に包まれた。
そこで山本綾音は、彼らを案内してきた老漁師の方を向いた。「ここから出る方法はありますか?」