「ママ、このおばさんは誰?泣きそうになってるけど、どうして?」幼い声が響いた。
仁藤心春は優しく微笑んで、「ママの親友よ。綾音おばさんって呼んでいいわ。ママに会えて嬉しすぎて、そうなっちゃったのよ」
「嬉しすぎて泣くの?」小さな子は不思議そうに尋ねた。
「そうよ。大きくなったら分かるわよ」心春は子供の頭を優しく撫でた。
「私は泣きたくないわ。嬉しい時は笑うの」小さな女の子は言いながら、にっこり笑って、山本綾音に向かって「綾音おばさん、笑って!嬉しい時は大きな声で笑うのがいいの。ハハハハ……」
小さな子はわざと大声で笑って見せ、山本綾音は思わず苦笑いしてしまった。
心の中には多くの疑問が残っていたが、ここは話をする場所ではなかった。
「うちに来ない?私の両親があなたと……えっと、あなたの娘を見たら、きっと喜ぶわ」山本綾音は言った。「そうそう、娘さんの名前は?」
「仁藤展志よ」心春が答えた。
「私の愛称は展志ちゃんなの。綾音おばさんも展志ちゃんって呼んでいいよ」小さな子は自ら言った。
山本綾音はクスッと笑った。展志ちゃんは女の子への一般的な呼び方だったから。「展志ちゃんが愛称なの?展志とか志志とかじゃないの?」
「ママはいつも展志ちゃんって呼ぶの!でも、お隣のおばさんは志志って呼ぶよ」
「私が展志ちゃんって呼んでもいい?」山本綾音は尋ねた。
小さな子は頷いた。
山本綾音は子供の意思に従って「展志ちゃん」と呼んだ。
小さな子は満足そうに笑った。
仁藤心春は娘を抱きながら、山本綾音について山本家に入った。山本お父さんとお母さんは心春を見て大きく驚き、その後彼女が無事で生きていたことに安堵の表情を浮かべた。
そして展志が心春の娘だと知った時、多くの疑問があったものの、すぐには聞き出さず、ただ笑顔で小さな子に挨拶をした。
心春は山本お父さんとお母さんが少し老けたように見えたが、精神状態は良好だった。山本お父さんは今では歩けるようになっていたが、ゆっくりとした歩みだった。火傷は主に体にあり、顔にはあまりなかったが、手は火傷のため修復手術を受けていた。
それでも、山本お父さんの両手は凸凹していて、見るに忍びない状態だった。
山本お父さんは自分の手が小さな子を怖がらせるのではないかと心配で、手袋をしようとした。