さっき彼女が見たのは……心春だったの?
山本綾音の頭の中はほとんど真っ白になり、体は本能的な動きしか残っていなかった。
しかし、カフェを飛び出した時、さっき偶然目にしたあの姿を探すことができなかった!
心春?心春はどこ?
確かにさっき心春が道路のこちら側にいたはずなのに、もしかして向こう側かしら?
山本綾音が道路に飛び出そうとした瞬間、腕を強く引っ張られた。
「あなた、正気?道路を渡るなら、せめて信号を見なさいよ。一体何を追いかけてるの?」温井澄蓮の声が頭上から降り注いだ。
山本綾音はようやく我に返り、息を整えた。
さっきは見間違えたのかもしれない。あの人の隣には小さな女の子の手を引いていて、明らかに母娘のように見えた。
でも心春が、仮に本当に生きていたとしても、そんなに早く妊娠して出産できるはずがない。さっきの女の子は2、3歳くらいに見えたのに!