山本綾音は溜息をつきながら聞いていた。あの可愛い子が、こんな境遇だったなんて、本当に想像もしていなかった。
そして、その小さな子は今、何も知らないまま、無邪気に過ごしている。
「展志ちゃんがあなたに出会えて、本当に幸運だったわね」山本綾音は、親友が展志ちゃんを実の娘のように可愛がっているのが分かった。
「むしろ、私が展志ちゃんに出会えたことが幸運だったの。彼女の両親の恩は、一生かけても返しきれないわ。そして展志ちゃんは、私が海外で孤独だった時に、そばにいてくれて、私の精神的支えになってくれたの」仁藤心春は言った。特にあの時期は、展志ちゃんの両親が亡くなり、彼女自身も記憶が完全には戻っておらず、自分がどこから来たのかさえ思い出せなかった。
頭の中の記憶の多くは断片的で、つなぎ合わせることができなかった。