「秋山瑛真との結婚のことを考えたことがないなんて言わないでよ」と山本綾音が言った。
仁藤心春は冷や汗を流した。本当に考えたことがなかったのだ。
親友の表情を見て、山本綾音は目を見開いて、「あなた...まさか彼を見捨てるつもりじゃないでしょうね」
「何を言ってるの!」と仁藤心春は頭を抱えた。
「もちろん、あなたと瑛真のことよ。この三年間、彼はずっとあなたを探し続けて、しかも周りに女性は一人もいなかったわ。もしあなたが戻ってこなかったら、瑛真は一生独身を通すんじゃないかと思ったくらいよ。あなたは瑛真とのことをどう考えているの?」と山本綾音は好奇心を持って尋ねた。
仁藤心春は、団地の公園で健康器具のところで展志ちゃんと遊んでいる瑛真を見つめながら、「私は以前救助されたけど、記憶がなかったの。この一年で少しずつ記憶は戻ってきているけど、いろいろなことがあって、実際にそんなことを考える余裕がなかったわ」