温井卿介に会いに行くつもり

以前、彼は塩浜市での仁藤心春の足跡を意図的に消し去り、温井卿介側に発見されないようにしていたが、どうやら防ぎきれないこともあるようだ。

温井卿介を恐れてはいないものの、もし卿介が心春の存在を知ってしまったら、今の温井卿介の勢力では……

秋山瑛真は表情を曇らせた。認めたくない事実だが……今の自分は温井卿介の相手にはなれない。特にこの塩浜市では。

「秋山おじさま、展志ちゃん今日すっごく会いたかった!」アニメを見ていた展志ちゃんは、秋山瑛真が来たのを見て、すぐに彼の前まで飛び跳ねてきた。

「おじさまも会いたかったよ」秋山瑛真は自然に小さな子を抱き上げた。

抱き上げられた展志ちゃんは、柔らかな小さな手を秋山瑛真の頬に当てて、「おじさま、今日は何か嫌なことあった?」

「どうしてそう思うの?」彼は尋ねた。

「だってずっと眉間にしわ寄せてるもん」展志ちゃんは小さな指で秋山瑛真の眉間を指さした。

秋山瑛真は軽くため息をつき、「嫌なことはないよ。ただ少し考え事をしていただけだ」

「どんなこと?」展志ちゃんは好奇心いっぱいに聞いた。

「大きくなったら教えてあげるよ。そうそう、昨日おじさまが約束した願い事一つ叶えてあげるって言ったけど、何がいい?決まった?」秋山瑛真は話題を変えた。

「明日遊園地に行きたい!」展志ちゃんは言った。さっき見ていたアニメは、主人公が友達と遊園地に行くというものだった。

「遊園地?」秋山瑛真は少し驚いたが、これは子供らしい願いだった。「いいよ、明日連れて行ってあげる!」

「でも明日お仕事じゃないの?」仁藤心春が言った。明日は休日ではない。

「一日くらい休んでも、GGKは潰れやしない」秋山瑛真は言った。

「そうね、明日は遊園地で一日ゆっくり過ごしたら?リラックスするのにいいわ」山本綾音も横から言った。それに、これは展志ちゃんと秋山瑛真の絆を深めるいい機会だと思った。

三人が一緒に立っている様子は、まるで本当の家族のようだった。

しばらくすると、展志ちゃんが眠くなってきたので、山本綾音が子守りを買って出て、展志ちゃんを部屋に連れて行った。

リビングには仁藤心春と秋山瑛真の二人だけが残された。