油断しすぎた

「はい、まだ消息はありませんが、二少、先ほど病院で...」渡辺海辰の言葉が終わらないうちに、温井卿介の隣に座っていた白井莉子の表情が急変した。

「二少、遊園地に連れて行ってくださるとおっしゃっていましたよね?いつ行きましょうか?」白井莉子は慌てて話題を変え、渡辺海辰が病院で出会ったあの女性のことを話題にすることを恐れていた。

渡辺海辰がその女性の顔を見たかどうかは確信が持てなかったが、この街に「仁藤心春」にそっくりな女性がいることを二少に知られるわけにはいかなかった。

「遊園地に行きたいのか?」温井卿介は白井莉子の方を振り向いた。

「二少と一緒なら、もちろん行きたいです」白井莉子は言い、頬を少し下げ、温井卿介に対して45度の角度で顔を向けた。この角度が最も仁藤心春に似ていることを、彼女は知っていた。