仁藤心春は言葉を失った。
山本綾音は続けて言った。「とにかく、一度温井卿介にあなたを見られたら、どんなことが起こるか誰にも分からないわ。秋山瑛真の言う通り、まずは別の街に行って、塩浜市での万全の準備が整ってから戻ってくるのが良いと思うわ。もちろん、あなたたち二人が結婚してから戻ってくるのが一番いいけどね!」
「あ、あなた何を言ってるの!」仁藤心春の顔が赤くなった。
「どうして?間違ったこと言った?あなただって、瑛真さんはいいお父さんになれるって言ってたじゃない。展志ちゃんもお父さんが欲しがってるみたいだし、二人で外に行って、仲を深めてから戻ってくるのもいいと思うわ」山本綾音は冗談めかして言った。
仁藤心春の顔は一層赤くなった。
「じゃあ、展志ちゃんはもう寝室で寝てるから、私は帰るわ。二人でゆっくり話してね」山本綾音は自分のバッグを手に取って先に帰った。