ゆびきり

「展志ちゃん、もう寝る?」仁藤心春は再び尋ねた。この言葉は、今夜すでに何度も繰り返していた。

しかし、小さな頭は依然として固く首を振った。「展志ちゃん、眠くない!」

仁藤心春は、明らかに眠そうな表情なのに、眠くないと頑固に主張する小さな子の様子を見て、苦笑いしながらも心が痛んだ。

「ママが言ったでしょう?これからは展志ちゃんと離れることはないの。今寝ても、明日目を覚ましたら、いつでもママを見つけられるわ!」と彼女は言った。

「でも、見つからなかったら?」小さな子は信じられない様子だった。

「だから、ママは夜一緒に寝るの。明日朝起きたら、すぐにママに会えるでしょう!」仁藤心春は更に言った。

しかし小さな子は明らかにまだ不安で、その黒くて丸い瞳で少し離れたソファに座っている温井卿介を見つめた。「でも、悪いおじさんが私が寝てる間にママを連れて行っちゃったら?そしたら、ママに会えなくなっちゃうんじゃない?!」