「んっ……」仁藤心春は不意に唇を開かされ、温井卿介の唇と舌が彼女の口内の甘美を奪いながら攻め込んでくるのを受け入れるしかなかった。
彼のキスは、息が詰まりそうなほど激しかった。
彼女は無意識に抵抗しようとしたが、すぐに彼との約束を思い出した。
彼の側に留まる条件なのだから、今抵抗するもしないも意味があるのだろうか?
それに、抵抗したところで、結果は同じだ。むしろ彼の機嫌を損ねれば、やっと手に入れた平穏が壊れてしまうかもしれない。
仁藤心春は抵抗を諦め、体の力を抜いて、彼のキスを受け入れた。
「どうしてこんなに素直なの?」キスが終わった時、彼の掠れた声が耳元で響いた。
「私が嫌がって抵抗しても、やめてくれるの?」彼女は問い返した。
黒い瞳で彼女を見つめながら、彼は薄く笑った。「やめないよ」