「渡辺秘書、これはどういうことですか?」温井朝岚は渡辺海辰を見つめながら尋ねた。
山本綾音は緊張した表情を浮かべていた。この態勢は、彼らを止めるためのものなのだろうか!
そして相手がここでこのような態勢を取り、温井卿介の私設秘書までもがここにいるということは、心春もここにいるということを意味しているのだろう。
「二少様は、大少爺様と山本さんがいらっしゃることをご存知で、特別にお二人をお迎えするように私に指示されました」と渡辺海辰は答えた。
温井朝岚の瞳が微かに揺れ、山本綾音は驚きを隠せなかった。
「私たちを中に入れるの?」と山本綾音が尋ねた。
「はい!」渡辺海辰はそう言いながら、「どうぞ」と手で示した。
すると、彼の後ろにいたボディーガードたちは直ちに散開した。
山本綾音と温井朝岚は渡辺海辰に従って別荘に入り、リビングルームで温井卿介と対面した。
その時、温井卿介はソファに座り、お茶を手に持っていた。温井朝岚を見ると、微笑んで言った。「どうやら、兄さんの情報収集能力は私の想像以上のようですね」
山本綾音は直接温井卿介に向かって言った。「心春と展志ちゃんはどこにいるの?」
もし温井朝岚が彼女を引き止めていなければ、きっと温井卿介の目の前まで突っ込んでいただろう。
「山本綾音、よくやったな。仁藤心春が塩浜市に戻って一ヶ月余り、あなたは彼女の住む場所を提供し、秋山瑛真との面会を見守っていたのに、ずっと私には黙っていた?以前、心春を探していた時、私はあなたと情報を共有していたはずだが」温井卿介は冷笑しながら言った。
山本綾音は心の中で恐れを感じながらも、友人のために温井卿介をまっすぐ見つめ、引き下がることなく言った。「私が言わなかったのは私の問題です。私に報復してもいいけど、心春と展志ちゃんを連れ去るべきではありません。彼女たちはあなたの所有物ではありません!これは既に不法監禁です!」
「そうですか?」温井卿介はお茶を一口すすり、「それは面白い。今すぐ警察に通報してみたらどうです?私が監禁で逮捕されるかどうか、とても知りたいものです」
「……」狂人!山本綾音は心の中で毒づいた。警察が来ても、温井卿介を逮捕する勇気はないだろう。
結局のところ、今の塩浜市では温井卿介は思いのままに振る舞える立場にあり、誰も表立って彼に逆らえないのだから!