山本綾音はここ数日、口内炎ができるほど焦っていた。心春と展志ちゃんの行方が分からず、心春の携帯電話もつながらない。そして秋山瑛真の方でも心春の居場所を突き止められていなかった。
心春が失踪して以来、温井卿介も公の場に姿を見せていなかった。
心春は...温井卿介に一体どこへ連れて行かれたのだろう?!
この時、山本綾音は彼女を訪ねてきた温井朝岚を見て、「心春の情報があるの?」と尋ねた。
「まだない」と温井朝岚は答えた。
山本綾音の目が一瞬暗くなった。朝岚でさえ居場所が分からないなら...
「でも二つの情報がある」と温井朝岚は言った。
山本綾音の目が輝いた。「どんな情報?」
「渡辺海辰、つまり卿介の秘書が直接心春の以前のマンションに行って、そこに清掃スタッフを派遣したんだ」と温井朝岚は言った。
山本綾音は一瞬戸惑った。「それがどうかしたの?以前も温井卿介は心春のマンションに行ってたじゃない!」人が行くなら、当然清掃する人もいるはずだ。
「特別な用事がなければ、渡辺海辰が直接そこへ行くことはないはずだ。今、渡辺海辰がマンションに行って清掃させているということは、おそらく誰かがそこに住むことになるんだろう」と温井朝岚は説明した。
「つまり、心春が以前のマンションに住むかもしれないってこと?」山本綾音は急いで尋ねた。
「その可能性はある」と彼は答えた。
山本綾音は眉をひそめた。もし心春が本当に以前のマンションに住むのなら、温井卿介が心春を連れ去り、彼女に関するすべての情報を遮断したのは一体なぜだろう?
「じゃあ...二つ目の情報は?」彼女は更に尋ねた。
「二つ目の情報は、心春の居場所は特定できなかったものの、卿介が塩浜市の郊外に別荘を密かに購入していたことが分かった。この別荘の存在を知っている人は極めて少なく、心春もそこに隠されている可能性がある」と温井朝岚は言った。
「住所を教えて、見に行きたい!」山本綾音は言った。心春がそこにいるかどうかに関わらず、確認しに行かなければならない!
「じゃあ一緒に行こう」と温井朝岚は言った。
「いいえ、私一人で行きます。あなたが来たら巻き込まれてしまう。うっかりすると、あなたと温井卿介が衝突するかもしれない」と山本綾音は言った。