「温井卿介の言ってることは本当なの?」しばらくして、山本綾音はようやく自分の声を取り戻したかのように尋ねた。
「本当よ」仁藤心春は答えた。
「でも、もしそうだとしたら、秋山さんは……」
山本綾音の言葉は途中で仁藤心春に遮られた。「綾音、私はもう決めたの。二、三日後には以前のアパートに戻るわ。それに卿介も約束してくれたの。私の自由を制限しないって」
彼女は「制限付きの自由」という部分を少し隠した。親友には知られたくなかった。温井卿介との約束を受け入れたとしても、彼は依然として彼女を信用せず、監視の目を光らせるということを。
山本綾音が息を詰まらせていると、仁藤心春は「座って」と言った。
そう言いながら、仁藤心春は親友を近くのソファーに座らせた。「今はこれでいいの。私は展志をちゃんと育てることができるし、塩浜市で幼稚園も探せる。もう幼稚園に通う年齢になってきたし。それに、あなたが前に温井朝岚さんと結婚したいって言ってたでしょう?これなら私もあなたの結婚式に参加できるわ……」