特別な扱い

「はい」スタッフは応じて、仁藤心春を隣の部屋のドレスエリアへ案内した。

一方、温井卿介は休憩エリアのソファに座り、マネージャーから渡された冊子を眺めていた。

仁藤心春はスタッフについてドレスエリアに来ると、所狭しと並ぶドレスを目にした。価格は分からないものの、その仕立ての良さや、施されている宝石の数々を見れば、当然かなりの高額だろうと察せられた。

三日後に温井卿介と参加する宴会に対して、彼女には何の期待もなく、当然ドレスを選ぶ気も起きなかった。

そこで心春は適当にドレスを見回し、シンプルで控えめなドレスを一着選んだ。「これにします」

「このドレスはお嬢様の雰囲気によく合いますね。他のもご覧になってみては…」

「結構です。これで大丈夫です」心春は相手の言葉を遮った。