仁藤心春の顔が青ざめ、無意識のうちに秋山瑛真を自分の後ろに庇った。
彼女のこの行動は、明らかに温井卿介の不興を買った。温井卿介は眉をひそめ、仁藤心春を冷たく見つめながら言った。「お姉さんがどこに行ったのかと思っていたら、こんなに長く宴会場に戻って来ないから。なるほど、ここで元の上司と旧交を温めていたというわけですか?」
「瑛真を見かけただけで、少し話をしただけよ」と仁藤心春は答えた。
温井卿介がこの休憩室のドアをこんなにも正確に開けられたのは、きっと彼女の周りに配置されたボディーガードと関係があるのだろう。
彼女はボディーガードがどこにいるのか知らなかったが、彼女と秋山瑛真がこの休憩室に入った後、部下が状況を彼に報告したに違いない。だからこそ、彼は彼女がここにいることをこれほど正確に知ることができたのだ。