「えっ?」仁藤心春は驚いた顔をして、「あなたも行くの?」
「どうして、私が行けないの?それとも、秋山おじさんに会いに行くのは、実は秋山瑛真に会いたいからなの?」温井卿介が言った。
仁藤心春は唇を噛んで、この件についてこれ以上争いたくなかったので、「じゃあ、瑛真に連絡してみるわ。彼が同意すれば、一緒に秋山おじさんに会いに行きましょう」と言った。
温井卿介は微笑んで、「いいね、そう決まりだ!」
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三日後、秋山瑛真の別荘で、温井卿介と秋山瑛真が向かい合って立っていた。二人の男性は互いを見つめ合い、空気は重苦しい雰囲気に包まれていた。
周りの使用人たちと二人の部下たちは、誰も声を出す勇気がなかった。
仁藤心春は二人の対峙を完全に無視して、「秋山おじさんに会ってくるわ」と言った。
「ああ、案内するよ!」秋山瑛真はすぐに言った。
「じゃあ、私も秋山おじさんにご挨拶させていただきましょう。まだお会いしたことはありませんが、おじさんと呼ばせていただいても良いはずです」と温井卿介が言った。
おじさんだと?秋山瑛真は心の中で呪いながら、手を上げて温井卿介の行く手を遮った。「父は体調が悪いので、あなたに会う元気はないでしょう」
「では、秋山会長はここで私と雑談でもしませんか?時間つぶしに」と温井卿介が言った。
つまり、彼が行けないなら、秋山瑛真も行かせない。彼は秋山瑛真と心春を二人きりにはさせない!
秋山瑛真は温井卿介を怒りの目で見つめた。自分の家で、相手の指図を聞かなければならないのか?
仁藤心春は急いで秋山瑛真の服の裾を引っ張った。「瑛真、私一人で秋山おじさんに会いに行くわ。今日はおじさんに会いに来たんだから、もし争いが起きたら、おじさんが悲しむわ」
秋山瑛真はようやく怒りを収め、使用人を呼んで案内させた。
仁藤心春は使用人について行った。
温井卿介は秋山瑛真に向かって言った。「さて、これで話ができますね」
「私はあなたと話すことなど何もないはずだ」秋山瑛真は不機嫌そうに言った。
「そうですか?私は話すことがあると思いますよ。なぜなら、あなたが私たちを一緒にここに来させることを承諾したことが、とても興味深いですから」と温井卿介が言った。
秋山瑛真の薄い唇はほとんど一直線になっていた。