秋山おじさんに会ってから、仁藤心春はずっと秋山おじさんに合う香りを作ろうと考えていた。
温井卿介が経営するアロマ株式会社には実験用の研究室があり、心春はもちろんそれを借りていた。
そしてその後の数日間、彼女は毎日展志ちゃんを幼稚園に送った後、研究室に来ては香りの配合実験をしたり、市場へ行って香りの材料を選んだりしていた。
日々はこうして過ぎていき、温井卿介との関係も、まあまあ平穏に過ごしていた。
ほとんどの場合、温井卿介は彼女に夜一緒に寝るよう求めていたが、特別な状況では例外もあった。
例えば...展志ちゃんが病気になった時、彼女が夜娘の側にいたいと申し出ると、彼は意外にもすぐに了承してくれた。
彼女が説得する必要すらなかった。
展志ちゃんが熱を出した時のことを思い出すと、心春はまだ胸がどきどきした。
幼稚園から展志ちゃんを迎えた後、小さな子は眠たいと言い、すぐに眠ってしまった。
夕食の時間になって、彼女が小さな子を起こしに行ったが、起きなかった。そして額に触れると、驚くほど熱く、耳式体温計で測ると、40度を超えていた。
その瞬間、彼女は慌ててしまった。展志ちゃんと過ごした1年の間にも何度か熱を出したことはあったが、ほとんどが38度台で、39度になることさえ稀だった。
彼女は目を赤くして、展志ちゃんを抱きかかえて部屋から飛び出した。
温井卿介はその様子を見て、「どうしたんだ?」と尋ねた。
「展志ちゃんが熱を出したの、病院に連れて行かなきゃ!」彼女は急いで言った。
彼はその状況を見て、突然彼女の腕から子供を抱き取った。「俺が抱くよ、車で病院に連れて行こう!」
温井卿介は自ら車を運転し、最寄りの病院へと向かった。
仁藤心春は娘を抱きかかえ、後部座席に座り、異常に赤く熱い娘の頬を見ながら、唇を強く噛んでいた。
彼女は泣いてはいけない、弱音を吐いてはいけない!
今の彼女は展志ちゃんのお母さんなのだ!彼女自身が慌ててはいけない、冷静でなければならない!
そう思い続けていても、心の中の恐怖感はどんどん広がっていった。