そのような眼差しに、仁藤心春の心臓は思わず大きく跳ねた。この瞬間、まるで自分全体がその瞳の中に引き込まれていくような感覚だった。
彼女は少し乾いた唇を軽く噛み、何も言わずに自分の実験台へと歩み寄り、まだ終わっていない作業を続け始めた。
温井卿介は適当に椅子を引き寄せ、彼女からそう遠くない場所に座り、静かに彼女を見つめていた。
最初は少し落ち着かない様子だった彼女だが、すぐに注意力をすべて実験に集中させた。
実験台で、仁藤心春は保護マスクをつけ、慎重に香りの実験を進めていた。彼女は完全に没頭しており、この瞬間、彼女にとって周囲のすべてが虚無になったかのようだった。
そんな仁藤心春を見つめる温井卿介は、魅了されると同時に嫉妬していた。
彼は常に知っていた。彼女が本当に香り作りという仕事を愛していることを。だからこそ彼女は独学でアロマの知識を学び、卒業後もアロマを自分の本業としたのだ。