そのような眼差しに、仁藤心春の心臓は思わず大きく跳ねた。この瞬間、まるで自分全体がその瞳の中に引き込まれていくような感覚だった。
彼女は少し乾いた唇を軽く噛み、何も言わずに自分の実験台へと歩み寄り、まだ終わっていない作業を続け始めた。
温井卿介は適当に椅子を引き寄せ、彼女からそう遠くない場所に座り、静かに彼女を見つめていた。
最初は少し落ち着かない様子だった彼女だが、すぐに注意力をすべて実験に集中させた。
実験台で、仁藤心春は保護マスクをつけ、慎重に香りの実験を進めていた。彼女は完全に没頭しており、この瞬間、彼女にとって周囲のすべてが虚無になったかのようだった。
そんな仁藤心春を見つめる温井卿介は、魅了されると同時に嫉妬していた。
彼は常に知っていた。彼女が本当に香り作りという仕事を愛していることを。だからこそ彼女は独学でアロマの知識を学び、卒業後もアロマを自分の本業としたのだ。
そして彼女が仕事に集中している姿に、彼は自然と嫉妬の感情が湧き上がってきた。
もし彼女がこのように集中して彼を見つめてくれたら、どれほど素晴らしいだろうか?彼は彼女の目に映る人が、自分だけであることを望んでいた!
突然、喉が乾き始め、体の中である種の欲望が高まってきた。
くそっ!彼は心の中で呟いた。今の彼は、まるでいつでも発情しそうな野獣のようだった。
ただ...彼はただ彼女に対してだけこうなるのだ!
温井卿介は視線をそらし、体を落ち着かせるために他の場所を見た。
しかし突然、ある物を見つけると、少し驚いた様子で立ち止まった。
しばらくして、温井卿介は立ち上がり、その物に向かって歩いていった。
仁藤心春が手元の実験作業を一時停止し、顔の保護マスクを外して体の筋肉をほぐしていた時、実験室に声が響いた。
「これは君が作ったのか?」
仁藤心春が振り向くと、温井卿介が棚の近くに立ち、手に香り袋を持っているのが見えた。
「はい、それは私が作りました」と彼女は答えた。
「腕前は昔とあまり変わらないな」と彼は言った。かつて彼女は彼にも香り袋をプレゼントしたことがあり、デザインはこれと同じで、布地だけが違っていた。「でも、なぜ突然香り袋を作り始めたんだ?」