その一つは、先ほど心春が父親に渡したあの香り袋で、もう一つは……
秋山瑛真はしゃがみ込んで、地面に落ちていたこの二つの香り袋を拾い上げ、父親のものを片付けると、もう一つの香り袋をゆっくりと手の中に握りしめた。
この香り袋は、彼女が手作りしたものだろう。しかし先ほど、彼女は父親への香り袋だけを取り出し、これは出さなかった。つまり、彼女はこれを彼に渡すつもりではなかったということだ。
では、彼女は誰に渡すつもりだったのだろうか?
そう考えると、秋山瑛真は香り袋を握る手に力が入り、かつて彼がほとんど手に入れかけていたものが、砂のように彼の手からこぼれ落ちていくような感覚に襲われた。どれだけ努力しても、それをつかむことができない!
なぜ……いつもこうなのだろう?
いつも一歩遅れているような気がする!