「あっ!」仁藤心春はほとんど反射的に悲鳴を上げ、目を見開いて、信じられないという表情で目の前の人を見つめた。
彼が...目を覚ましたの?
これは現実?それとも夢?
病室の外にいた看護師は、悲鳴を聞いて急いで駆け込んできた。温井卿介がベッドから身を起こそうと苦労しながら、仁藤心春の手をしっかりと握り、かすれた声で言っているのを見た。「行かないで...行かないで...」
看護師は呆然とした。温井二若様が...目を覚ました?!
医師が知らせを受けて駆けつけた時、仁藤心春はすでに冷静さを取り戻し、ようやく温井卿介が本当に目を覚ましたことを確信していた!
そして医師が温井卿介の身体検査をしようとした時、温井卿介は仁藤心春の手をしっかりと握ったまま、離そうとしなかった。
仁藤心春には分かっていた。今目覚めたばかりの彼の握る力はそれほど強くなく、少し力を入れれば振りほどくことができるだろう。しかし彼女はそうしたくなかった。彼を傷つけることを恐れたからだ。
「行かないわ、そばにいるから。卿介、まずは手を離して。そうすれば医師が検査できるから」と仁藤心春は言った。
温井卿介は仁藤心春をじっと見つめ、彼女の言葉の真偽を見極めようとしているようだった。しばらくして、ようやく手を離した。
仁藤心春はほっと息をついた。
医師はようやく温井卿介の初期検査を始めることができた。
初期検査では特に問題はなかったが、夜が明けてからさらに詳細な検査が必要だった。
翌日、山本綾音が病院に来て温井卿介が目覚めたという知らせを聞き、急いでやってきたが、仁藤心春がベッドの横に座り、温井卿介はいつものように目を閉じてベッドに横たわっているのを見つけた。
ただ違うのは、今、温井卿介の手と心春の手が握り合っていることだった。
山本綾音は友人の側に歩み寄り、「温井卿介...本当に目を覚ましたの?」
「うん、昨日の夜目を覚ましたの」と仁藤心春は言った。「4時間ほど起きていて、また眠ってしまったわ」
医師が彼の身体検査を終えた後、彼は再び彼女の手をしっかりと握り、まるで彼女が去ってしまうことを恐れているようだった。
そして彼女は、ずっとそのまま温井卿介の病室にいた。