第18章 甘い雰囲気の一幕

大谷補佐は霧島冬真が苦しそうにしているのを見て、思わず提案した。「社長、かなり痛そうですが、病院に行かれたほうがよろしいのではないでしょうか」

霧島冬真は病院に行くのは時間の無駄だと思い、低い声で断った。「必要ない。城南の土地開発プロジェクトの資料を持ってきてくれ」

大谷希真も強要できず、「はい、社長」と答えた。

しかし戻ってきた時、思いがけず梁川千瑠と出くわした。

彼女は薄い白のキャミソールワンピースを着ており、シンプルでありながら上品な雰囲気を醸し出していた。

髪を上げ、高価なダイヤモンドのヘアピンで留めており、さらに彼女の愛らしく美しい容姿を引き立てていた。

四年前より一層美しくなったように見えた。

しかし、それだけ一層嫌悪感も増していた。

四年前、社長が事故に遭った後の彼女の行動を、今でも鮮明に覚えている。

当然、彼女に対して好感は持てなかった。

しかし梁川千瑠は大谷希真を見ると、顔を輝かせ、自ら笑顔で挨拶をした。「大谷補佐、お久しぶりです」

大谷希真は冷淡な態度で軽く頷いた。「梁川さん、こんにちは」

梁川千瑠は好奇心に駆られて彼の後ろを覗き込んだ。「冬真さんは今忙しいですか?少しお話ししたいことがあるんですが」

大谷希真は事務的に答えた。「申し訳ありません、梁川さん。社長は執務中で、お会いできる状況ではありません」

梁川千瑠は彼の拒否を気にする様子もなく、「大丈夫です。ちょっとだけお話しするだけですから、お仕事の邪魔にはなりませんよ」

そう言うと、そのまま霧島冬真のオフィスに入ってしまった。

霧島冬真はドアの開く音を聞いて大谷希真が戻ってきたと思い、顔も上げずに尋ねた。「なぜ書類を取りに行くのにこんなに時間がかかる」

梁川千瑠は入り口に立ち、少し首を傾げながら、甘い笑顔で霧島冬真に挨拶した。「冬真さん、私よ、千瑠です」

すぐ後に続いた大谷希真は、良くない表情で言った。「申し訳ありません、社長。梁川さんを止められませんでした」

梁川千瑠はすぐに思いやりのある様子で大谷希真の弁解を助けた。「冬真さん、大谷補佐のせいではありません。私がお話ししたくて、勝手に入ってきてしまったんです」

霧島冬真は眉間にしわを寄せ、「仕事が残っている。用件があるなら明日にしてくれ。大谷、梁川さんを家まで送ってくれ」