第19章 私を馬鹿にするな

夏目星澄は霧島冬真が屋敷に戻らないのは、前回のことで怒っていて、わざと彼女に当てつけているのだろうと考えていた。

以前も霧島冬真は何度か機嫌を悪くしたことがあったが、結局は彼女が機嫌を直してくれた。

おそらく彼は幼い頃から高い地位にいて、傲慢で、正しいか間違っているかに関係なく、決して自分から頭を下げることはなかった。

しかし夏目星澄は霧島冬真が好きで、進んで頭を下げる側になることも厭わなかった。

そして今、彼の心の中の人が戻ってきたことを知り、彼女は自分一人だけが努力しているこの恋を諦める覚悟もできていた。

だが、完全に別れる前にこのような醜い場面を目にすることになるとは思わなかった。

夏目星澄は自分の心が誰かにナイフで深く刺されたような痛みを感じた。

とても痛かった。