霧島冬真が先に沈黙を破った。「行こう」
夏目星澄は冷たい目で彼を見つめ、何も言わずに歩き出した。
彼女は車で来ていたが、霧島冬真は酒を飲んでいたので、当然運転はできなかった。
彼は当然のように夏目星澄の車に乗り込んだ。
夏目星澄はその様子を見て、今さら降りろとも言えなかった。
彼女は車を二人が以前住んでいた別荘へと直接向かわせた。
このような状態の霧島冬真が実家に戻れば、おばあさまが見たら心配するに違いないからだ。
到着しても、霧島冬真は助手席で目を閉じたままだった。
夏目星澄は彼が酔いつぶれているのかもしれないと思い、そっと揺すって、「起きて、着いたわよ」と声をかけた。
霧島冬真はようやくゆっくりと目を開け、小さく返事をした。
しかし、依然として席から動こうとしなかった。
夜は風が強く寒かったため、星澄は霧島冬真を車の中に放置すれば何か起きるかもしれないと心配になり、眉をひそめながら不本意ながら、「降りて」と声をかけた。
それを聞いた霧島冬真は片手を上げ、彼女に近寄るよう合図をした。「支えてくれ。めまいがする」
夏目星澄は大きくため息をつき、酔っ払いと言い争うのはやめることにした。「本当にあなたには借りができちゃうわね」
霧島冬真は完全に夏目星澄に寄りかかり、目を細めながら、口元に微かな笑みを浮かべていた。
九牛二虎の力を使って、夏目星澄はようやく彼を家の中に連れ込むことができた。
しかし、身長188センチの大男を寝室まで支えて連れて行く力は残っていなかった。
仕方なくソファーに彼を下ろした。
だが霧島冬真は夏目星澄の手を離そうとせず、彼女もソファーに引き寄せてしまった。
霧島冬真も少し意識を取り戻したようで、かすれた声で尋ねた。「ここはどこだ?」
夏目星澄は彼の上に倒れたまま必死にもがき、やっと起き上がると、彼を睨みつけて「あなたの家よ!」と答えた。
この騒動で、夏目星澄は汗をかいていた。
彼女はイライラしながら上着を脱ぎ、乱れた髪を整えた。
横で息を切らしながら座っていた。
霧島冬真は目を上げるだけで、隣の夏目星澄が見えた。
セミロングの髪が完全に肩に垂れ下がり、その顔をより小さく見せていた。
灯りの下で、彼女の白い肌は潤いを帯びて輝いていた。