第33章 動くな

夏目星澄は見られることに居心地の悪さを感じ、自分の上に覆いかぶさるように圧し掛かってきた男性を力強く押しのけた。「だから、あなた本当は酔っていなかったんでしょう?」

そうでなければ、さっき起こったことすべてを覚えているはずがない。

霧島冬真は美しい眉を少し上げ、軽く鼻を鳴らした。「酔う?私を甘く見すぎだな」

上がり調子の声色で、まるでそれが何か大したことであるかのように、得意げな雰囲気を漂わせていた。

夏目星澄は彼と酔っているかどうかについて議論する気はなく、男性の束縛から逃れようと、体をもがき続けた。

霧島冬真は突然瞳の色を暗くし、彼女の手首を握る手に更に力を込めた。「動くな」

夏目星澄が霧島冬真の言うことを聞くはずもなく、動くなと言われても動かないわけがない。