第30章 大変なことになった!

霧島冬真も夏目星澄の誕生日にそのことを知った。

夏目星澄はキッチンで祖母と電話をしながら、昔のことを話していた。

彼の祖母は以前、夏目星澄の大学進学を援助し、彼女の父親の腎臓移植手術のために寄付もしていた。

その後、彼女の家族に借金問題が発生した時も、祖母が助けてくれた。

だから夏目星澄は、祖母が霧島冬真の世話をする人を必要としていると知った時、やって来たのだ。

その後、祖母は彼に早く結婚して子供を持つように望んでいた。

しかし霧島冬真は仕事が忙しいという理由で先延ばしにし続けていた。

夏目星澄はその時、薬を使って彼のベッドに入り込んだのだ。

結局のところ、すべては祖母の恩に報いるためだった。

彼への愛ではなかった。

だから、その日梁川千瑠から電話があり、帰国して会いたいと言われた時、彼は腹を立てて彼女を迎えに行ったのだ。

しかし帰ってきたら、彼が何も言う前に、彼女が離婚を切り出した。

これは全くの馬鹿げた話だ!

林田真澄は霧島冬真の話を聞いて、何か違和感を覚えた。「でも、瑶子から聞いた話では、奥さんはあなたのことが大好きだと言っていたけど、何か誤解があるんじゃない?」

霧島冬真は眉をひそめた。誤解なのだろうか?

突然、胸が重くなるような感覚に襲われた。

手元に残った最後の半分のグラスの酒を一気に飲み干した。

緒方諒真は見かねて、彼のグラスを取り上げた。「冬真さん、少し控えめにした方がいいよ。恋愛の問題は酒を飲んで解決できるものじゃない。俺から言わせてもらえば、直接家に帰って奥さんに聞いた方がいい。あなたのことが好きなのか、恩返しなのか!」

彼の言葉が終わって間もなく、外からノックの音が聞こえた。

緒方諒真は接待マネージャーが酒を持ってきたのだと思い、「どうぞ」と声をかけた。

すぐにドアが開き、入ってきたのは艶やかな容姿で、ベージュのボディコンドレスを着て、シャネルのコートを羽織り、エルメスのバッグを持った女性だった。

そしてその女性は他でもない、緒方諒真が最も嫌う梁川千瑠だった。

霧島冬真は深い海のような瞳を冷たく光らせ、「なぜ来たんだ?」と言った。